−久遠−
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 ある日、一人の少女が、ある町を訪れました。
 石造りの建物の並ぶその町は、知らない人でいっぱいでした。
 うちに帰りたい。
 駅はどこにあるの?
 大きな男の人に、少女は聞きました。

 怪物のように大きなその人は、少女に訊きました。
 君は、誰と一緒にきたんだ?
 くおん……久遠と一緒に来たの。
 けど、いつの間にかいなくなっちゃった。
 これから、どこに行けばいいのかな?

 さあ……それは分からない。
 しかし、君がどこに行けばいいのかは分かるよ。
 少しいけば交番がある。
 制服を着たお巡りさんに訊いてごらん。
 そんなに遠くは無いから。

 沢山お礼を言うと、少女は男の人にほめられました。
 ちゃんとお礼を言わないといけないって、久遠が言ってたの。
 つっかえながらも、少女はちゃんとお礼を言いました。
 手で少女をなでながら、男の人は訊きました。
 ところで、久遠て誰なんだ?

 なぜか、少女は喜びました。
 にっこり笑って、言いました。
 ぬりえを教えてくれたの。
 ねぇ、久遠は妖精さんなんだよ。
 のんびりしてるけど、とっても長生きなの。

 はっはっは。
 ひととおり笑って、男の人は言いました。
 不思議だな、君は。
 へこんでいた俺の気持ちを、とても明るくしてくれた。
 本当にありがとう。

 魔法も使えるんだよ!
 皆、信じてくれないけど。
 むかし、いっぱい色々してくれたもの。
 名人なんだって、魔法の。
 もしもここにいたら、おじさんに魔法を見せてあげられるのに。

 やぁ、君は優しいんだな。
 雪のように真っ白な心を持っている。
 よし、じゃあ俺も久遠を探すのを手伝うよ。

 らしくないかな……?
 リスの様に小さなこの少女がどうなろうと、俺には関係ないのに。
 ルビーがもらえるわけでも、サファイアがもらえるわけでもない。
 冷血で通っている俺だ。
 ろくにいいことをしたことも無い……。

 わぁ、ほんとう? ありがとう。



 ……少女の言葉に、おじさんは困ったような笑みを返しました。
 そして少女は、とっても大きな男の人と一緒に、久遠を探す旅に出ました。
 旅の最中、少女はたくさんのことを知り、旅をとても楽しみました。
 長い長い旅のあと、少女は久遠に出会います。
 久遠は、少女の家で待っていました。
 久遠は、少女に言いました。

「おかえり」

 少女と一緒に旅をした男の人は、少女に別れを言い、町に帰っていきました。
 男の人に、妖精は見えませんでした。


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