転章
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闇の中に、淡く光る井戸がぽつんとあった。リーグは仰向けになっていた体を起こし、立ち上がる。辺りは暗く、ただ白い井戸だけが唯一の光源だ。ぼんやりとする頭を軽く振って井戸に近づくと、すぐ傍に二つの人影があることに気がついた。人影に気がついて足を半歩引くのも、あげかけた手を下すのも、自分とまったく同じ動き。鏡なのかと考えて、それならばあげる手が逆になるはずだと思いなおす。
二人に声をかけようと口を開いたところで、にゃあ、と、間延びした鳴き声が聞こえた。光る井戸の上に、紺色の毛並みの美しい猫が座っている。
……おかしい。確か、井戸には、蓋が……ついて、いた?
あいまいな記憶を手繰り寄せようとするが、はっきりと思い出すことができない。猫の瞳が、じっとこちらを見つめている。
――を。急がなければ。
理由のわからない焦燥にかられて、ふらりと一歩井戸に近付いた。そのとき、くらりと激しいめまいがして――。
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