さくらの部活日誌@

 

「島村くん・・・、どうしてオカルト部をやめてしまったの・・・?私たちこれからどうしたらいいの?・・・・」

 5月のある日の放課後、森井さくらは視聴覚教室の窓ぎわでひとり頬つえをついて、外をぼんやりながめていた。

なにやら悩んでいるようで時おり憂いの表情をうかべため息をついている。

「はぁ〜。どうしたらいいのかな・・・」

また深いため息をつき、空を見上げ流れる雲を眺めている。すると1人部室に入ってきた。

「あら、さくらさん。早いですね」

「あら、春田さん、あなたこそ今日は早いのね。あっ、もう私のことは“さくら”呼んでね。同級生なんだし」

「そういうさくらさ…さくらだって私のこと春田さんって呼んでるじゃない。“芽衣子”でいいのよ」

部室にやってきたのは学校のアイドル春田芽衣子。しかし本人はいたってアイドルという意識はない。
彼女のファンクラブが多数あるだが、まったく気にしていない。

彼女はとある理由があって3年生になってこのオカルト部に入部してきた。

オカルト部は部員が少なくおまけに女子がさくらと芽衣子しかいなかったので二人はすぐに意気投合。今二人は共通の目標がある。

「島村くん今日は図書室にはよらないで帰ったみたい。忙しいのかな?」

「さっきはそんな風に見えなかったけどね。なかなか彼もガンコものね。少しぐらいこっちの言うことも聞いてくれたらいいのにね。
いつも『僕たちは受験生だろ』ってホントいやになるわね」

彼女たちは島村透をオカルト部に復帰させることが目標なのだ。理由はどうであれ。

とーるは3年生になったとたんいきなりオカルト部を退部してしまった。受験勉強に専念したいという理由からである。
3年生はさくらしかいなかったので必然的に部長はさくらが引き継ぐことになり(本人はあくまで部長代行と思っている)それから約1ヶ月が過ぎようとしている。

「そりゃいい高校に行きたいのはわかるわよ!でも島村くんの頭なら十分目標としているとこにいけるじゃない。そこまでして受験にこだわるのは他に理由があるの!」

普段さくらは無口なほうである。しかし、芽衣子の前では違った。

「理由はないけど○○高校には入っておきたいって島村くんは言ってた気がするけど…」

「意味わかんない」

さくらは頬をぷぅっとふくらませた。

そしてさくらと芽衣子は二人とも頬つえをついて窓の外をながめ、「はあ〜どうしよう・・・」といっしょにため息をついた。

「クスっ!私たちなんか変よね。芽衣子」

「先輩こんちはーす!早いですね。授業サボってたんですか?」

部の後輩3人が部室に入ってきた。現在オカルト部総勢5名。クラブ活動ができる最低人数は5名。
とーるが辞めるのとほぼ同時に芽衣子が入部してきたのでとりあえず今年は存続している。
しかし、来年はさくらと芽衣子が卒業してしまうので廃部の危機に直面している。当面の目標は2年生以下の部員の確保である。
おまけに文化祭への発表の準備があって、結構忙しい部活動になっている。
それと同時にさくらと芽衣子は後輩たちへの活動の手本としてとーるの復帰を日夜努力しているのであった。

「サボるわけがないでしょう。今日は私と芽衣子いや春田さんは授業が終わってすぐここに来たの」

後輩の前では芽衣子を春田さんと言い換えるほどさくらは律儀である。

「で、どうだった?」

さくらが後輩に聞く。

「それが先輩・・・島村部長いや先輩は今自宅には帰っていないそうです」

困惑気味に語る後輩にさくらは、

「自宅に帰っていない??家出かなにか?」

「いえ、何でも自宅が勉強に集中できる環境じゃないそうで、田舎のおじいさんのところにいるそうです。
先輩のお姉さんが教えてくれました。少し怖かったけど・・」

「田舎?でも彼今日もきちんと学校に来ていたわよ」

「田舎といってもとなり町の山の中だそうで、あまり知られていない山だそうですが」

そこでもう一人の後輩が口をはさむ。

「一応、彼が住所を教えてもらったので、僕たちはすぐにその住所をたよりにとなり町に行ってみたんですが・・・」

「行ってみたんですが!!?」

さくらと芽衣子が力を入れて続ける。

「最寄りの駅からバスに乗って終点まで行って、山の中に入ろうとしたのですが、地図にものっていないような所で、
案内図のようなものもなかったんです。とりあえず、神社の案内立て札を見つけて山の中に入ったのですが、
全然道がわからなくて、おまけに誰かに見られているような気がして、気味が悪くなってその日はそこで引き返しました」

「誰かに見られているって、何かおかしいよね」

さくらの目があやしく光る。横で芽衣子が

「不安になるとそんな感じになるかもしれないね」

と後輩に優しくほほえむ。後輩は芽衣子に声をかけられてぽっと顔が赤くなった。芽衣子自身は気がついていないが彼女はアイドルの素質はあるみたいだ。

2年生の後輩が二人の後輩の話をうけて、

「1年の二人に話を聞いて、僕は昨日帰りに島村先輩の後をつけたんですよ。彼らの言うとおり、駅を降りて、
バスに乗り、終点で降りてから山の中に入っていく島村先輩を後ろからついて行ったのですが・・・・」

「ついて行ったのですが!!?」

また、さくらと芽衣子が続ける。

「不思議なんです!確かに島村先輩は山の中に入っていったのをこの目で見たのですが・・・・、いなくなったのです。
そんなに距離を置いていた訳ではないのに見失ったんです!!」

「見失った??」

「僕はたぶん先輩は先に行ったのだろうと少しあわてて山の中に入ったのですが、やっぱりいなかったのですよ。
それから島村先輩を探して歩いていたら、道に迷ってしまって元来た道がわからなくなってしまったんです。
おまけに後輩たちが言っていた・・・そう誰かに見られている感じがして、『これ以上、山に入るな』と頭の中に
語りかけるような声がした感じがして、びっくりして振り返ったら・・・」

「ふりかえったら!!!!」

みな身を乗り出す。
「そこにはかわいい猫が一匹、僕を見つめていたんです。」

「ねこがぁ!!」

一同拍子抜け

「その猫は、僕をじっと見つめていて、急についてこいといわんばかりに後ろを振り向きゆっくりと歩いていったんです。
道に迷っていたので僕はとりあえずその猫についていったら、ちゃんと山のふもとのバス停までたどり着いたんですよ」

「道案内するねこなんて聞いたことないわねぇ」

さくらは腕組みをして考えている。

「それで先輩ここからがもっと不思議なんです!島村先輩を追って山の中に入ってからそんなに時間が過ぎていないと思っていたのに、
猫に連れられてバス停に着いたら山の中に入るときから3時間もたっていて、あたりはすっかり夜でした」

「ほんとにオカルトだわ・・・」

後輩の話になぜか満足げなさくら。

「で、結局島村くんの自宅捜索は打ち切りとなったわけね。ご苦労さま、ありがとう」

さくらは後輩たちをねぎらう。

「でも不思議よね、そんなところから島村くんが毎日学校に通っているんだ。なんか訳ありよね島村くんが住んでるその山」

「なんか私たちが知ってはいけない場所なのでは?」

芽衣子はすこしこわごわ話す。

「オカルト部はそんな不思議なことを研究するためのクラブなの。なんか私興味あるわ、 その山」
喜々としてさくらは話す。根っからのオカルトマニアかもしれない。

「先輩、ひとつ聞いてもいいですか?」

2年生の後輩がすこし恐る恐る話し始めた。

「先輩たちは、島村先輩ばかり言ってますが、今後の活動は島村先輩以外に部員を入れるも大事だって
森井先輩も言ってましたよね、そろそろ部員募集の活動もしたいのですが・・」

「そうだったわね、でも島村くんが戻ってくることが部員獲得の鍵になるの」

「でも・・・先輩。どうしても島村先輩でないとだめなんですか?
オカルト好きな人はいっぱいいると思うんですけど・・・・。なんか特別な理由があるんですか?」

後輩が少し不満げにつぶやいた。

「そうよ!彼でないと困るの!! どうしても島村くんでないとだめなの!!!

さくらと芽衣子二人同時に後輩に詰め寄るように言った。

「あわわっ!先輩すみません!」

あまりの剣幕にたじろぐ後輩。

「あっ、ゴメン。つい興奮して」

さくらと芽衣子は二人ともペロッと舌を出して後輩に謝った。(クスッ、私も芽衣子も島村くんのことになるとだめよね・・)さくらはちょっぴり反省した。

「じゃあ、気を取り直して今日の部活始めよっか」

オカルト部の活動は、部員の獲得に向けた活動と秋の文化祭に出すテーマを考えることが中心だ。
文化祭に皆があっと言うことをすれば幾らか部員が入るかも知れない。でもそのテーマがまとまらない。

「島村くん(先輩)がいればなぁ」

部員の皆がこう思っている。しかしとーる本人は部がこんなことになっていることは知らない。
さくらと芽衣子がとーるに現状を伝えようとしても、二人はとーるの前ではなぜかうまく話せない。
だからいまだにまともに話ができていないのだ。(結構とーるは周りのことには無頓着なのかも)

 

部活は今日も平行線となり、活動が終わった。さくらと芽衣子は一緒に帰った。芽衣子の親衛隊は今日はいないようだ。二人は珍しくゆっくり帰ることができた。

「島村くんて不思議なのよね、なんか私たちと違う何かを持っている気がするのよ」

さくらが芽衣子につぶやく。

「確かになんかどことなくさびしそうな、隠しているような。不思議な感じよね」

芽衣子もさくらに同意する。お互いにとーるにはなにかしら興味がある。気になる存在なのだ。

しばらく歩いてふとさくらが立ち止まった。芽衣子も合わせて立ち止まる。

「どうしたの?さくら?」

さくらの視線の先は、道を横切るノラ猫の姿があった。ノラ猫はすぐ見えなくなった。

「ねぇ芽衣子、行ってみない?」

「えっ?さくらなんて?」

「だから、今度は私たちで島村くんのおじいさんの家に行ってみない?もし、後輩たちが言うのが本当ならば、不思議な体験ができるはずよ!

島村くんの家を見つけることが目的だけど、ねこに道案内してもらえるなんてすごいことと思わない!?
そうしたら、オカルト部の活動報告にできるかもしれない。一石二鳥よ!!芽衣子!」

「でも・・・・さくら・・・・それって私たちストーカーみたいじゃ・・・」

「芽衣子!島村くんに部に戻ってほしくないの!」

「それはそうだけど・・・方法がね・・」

すこしさくらに圧倒される芽衣子。

「じゃあ、活動は手早くやりましょう!今度の日曜日はどう?私と芽衣子がいれば大丈夫だって!」

 

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