さくらの部活日誌A

 

「芽衣子、遅いなぁ」

日曜日の朝、さくらは芽衣子を待っていた。約束の時間の10時はもうすぐだが、町の駅に着く列車は30分ごとなので、
次の列車に乗っていなければ彼女は必然的に30分待つことになる。

さくらは少し早めに待ち合わせ場所についていたので、もうかれこれ30分以上は待っていることになる。

「確かに早く着すぎたかもしれないけど・・・・、今度ので乗っているよね」

10時すぎにその列車が入ってきた。降りて来る人はまばらだ。もともとこの駅周辺は、ハイキングコースにもなっているので、
ハイカーらしき人が何人か降りてきていた。

「もう・・・寝坊したのかな?携帯にかけてみよっか」

『おかけになった電話は、現在電波の届かない・・・・』

「だめだ・・・。電源切ってる」

さくらは少々不安になった。芽衣子は今回の『島村透祖父宅捜索作戦』は少々恐がっていたので乗り気ではなかったのではないだろうか・・。
もしかしたら、来ないのではないだろうか。あれこれ思いを巡らすさくら。

「場合によっては1人で実行よね・・」

すると、

「ごめーん。さくら!お待たせ」

声の主は芽衣子だ。やれやれやっと来たか。さくらは声のする方に振り向きざまに、

「おそーい!!芽衣子!!遅れそうなら携帯に電話をくれたら・・・・・・・・・・えっ?」

さくらは芽衣子を見て絶句した。

「芽衣子・・・・。何、その格好??」

芽衣子は登山用の服装だった。それもかなりの重装備。少し厚手のシャツにベスト。裾の閉まったズボンに登山用シューズ。
おまけに深めの帽子をかぶり、重そうなリュックを背負っていた。

「ん?なんか変??」

さくらは、ごく普通の近場にハイキングに行くような出で立ちだったので、芽衣子の格好が余計に目立って見えた。

「芽衣子、確かに山には行くけど、その格好は明らかに遠方の登山用だよ、富士山にでも登りに行くの?」

「やっぱりおかしいかな?」

「格好は、まあ・・・それでもいいけど、その荷物はなによ」

「えっ?みて見る?うんしょ!ちょっとおもい・・・」ドスン☆

芽衣子はリュックをおろして中身をさくらに見せだした。

「とりあえず、山に行くときは地図が必要でしょ、それとコンパスとメジャーでしょ」

「オリエンテーリングするわけでもないのに、いらないと思うけど」

「まあ、見てて、それと虫除けに虫さされの薬」

「まあ、それは必要かもね」

少々あきれ気味のさくら。芽衣子はお構いなしに続ける。

「雨が降ったときのカッパに、タオル少々」

「はいはい、それもいるかもね」

「それとね・・・これが重たいのよ、道に迷ったときのための水と食料」

「お弁当と水筒で十分だって、なんで2リットルのペットボトルなの」

「水は大切なのよ!それでもって、もしものためにカロリーメイトなんかもいいでしょ」

「1箱で十分だって、どうして6箱なの」

「遭難したら、救助を1日待つかもしれないじゃない。だから3食分を2人分。当然私とさくらの分よ」

「私の分は別にいいのに・・・。でもそれだけの荷物ならそんなに重くないはずよ、まだ他に何かあるの」

「それはね、じゃーん!秘密兵器の登場!強風の中でもお湯が沸かせるアルコールランプに、保温性抜群のポットでしょ、ついでにコーヒーも持ってきました」

「あきれた・・なんで・・・そんなものまで・・・、おまけにコーヒーはビンごと・・・」

さくらは頭を抱えた。

「あのね芽衣子、今日の目的は 島村透祖父宅捜索作戦なのよ、ハイキングに近いかもしれないけど、この荷物は多すぎだって 」

「そうかな、今回の作戦はかなり危険を伴うと思うけど・・・」

もともと芽衣子は後輩たちの話を聞いて自分なりに対策したつもりだった。そのため、荷物が多くなり待ち合わせ場所に着くのが遅くなってしまったようだ。

「とにかく、リュックの中の荷物をもう少し減らしてから行きましょう。そうでもしないと、この荷物の重さで遭難しそうよ」

「えー、もしなんかあったらどうするのよ」

「だから、さっさと家を見つけて帰ったらいいじゃない。さっ、リュックを貸して・・・ってホント重たいわね、ほんとにそれだけなの」

「・・・・・実は・・・・ねぶくろも・・・・」

「とにかく!荷物を減らしなさい!! (怒)」

さくらは声を荒げて芽衣子のリュックから不要と思うものをみつくろって、駅のコインロッカーに預けさせた。

「さあ、荷物も軽くなったことだし、行きましょう、バスももうすぐ出るわよ」

意気揚々とバスに乗り込むさくら。

「あー不安だな・・」

かなり不安げな芽衣子。

二人を乗せたバスはゆっくりと、とーるの家のある山のふもとの終点まで走り出した。

15分ぐらい走っただろうか、バスは終点の山のふもとに着いた。

客はさくらと芽衣子に近くにすんでいるとおぼしきおばあさんの3人だった。

バスはゆっくりロータリーを転回してもと来た道を帰っていった。

「さてと、ここからが本番よね、うーんなんかわくわくするなぁ!」

もういてもたってもいられないさくら。

「はぁー、ホント家なんてあるのかしら・・・この山の中で」

芽衣子は今もかなり不安な様子だ。すると、

「お嬢さんたち、これからどこに行かれるの?」

二人の背後からさっき一緒にバスを降りたおばあさんから声をかけられた。

「はい、友達の家を探し・・いや訪ねにきました。この山の中と聞いたんで」

「はて?この山中には確か木隠さんの家しかなかったと思うのだけれど・・・桂さんの知り合いなの?」

「きがくし?かつらさん??私たちは島村透くんがおじいさんの家にいると聞いてきたんですが」

「ああっ、透くんのお友達なの、桂さんは透くんのおじいさんなのですよ」

「そうだったのですか、じゃあそのおじいさんの家はご存知ですか」

芽衣子が少しほっとして家をたずねる。

「ええ、その山の入り口から入って、20分くらい登っていけば、一軒家なのでじきに見えてきますよ。ただし・・・・」

「えっ?ただしって」

「この山は、いろいろと云われがあって、よこしまな気持ちを持った人が山に入ると必ず迷うらしいのよ」

「ひえっ!そうなのですか!」

かなりあせる芽衣子。後ろでさくらは興味津々で聞いている。

「って言い伝え。私も何回もおじゃましていますから大丈夫。ただね、山の中だから同じ景色なので迷い易いから気をつけて、無理をしてはだめよ」

「はい、ありがとうございます!」

「それと、山の中で動物に出会ったら、優しくしてあげてね。もしかしたら困ったときにいいことしてくれるかもしれないわよ」

「はい、本当にありがとうございます」

二人はおばあさんにお礼を言って山の入り口に向かった。

「さくら、親切な方だったね」

「でも、なんか訳ありって雰囲気だったよね、この山の云われを知っていたし、なんで出会った動物に優しくしたらいいことしてくれるのかな?」

「さくらは疑り深いのね、きっとこの山を大切に思っている方なのよ」

「そうだといいけど・・・・」

二人はゆっくりと山の中に入っていった。

15分くらい進んだところで少し道に傾斜が出てきたので一旦休憩することになった。

「ふう。ねっ!芽衣子。あの荷物をあのまま持ってきていたら大変だったでしょ」

「うん。確かにね。もう少しで家が見えるかな?意外に簡単だったね」

さくらと芽衣子は道の脇に腰をかけてお茶を飲んで休憩している。計算だとあと5分くらいでとーるのいる木隠の家が見つかるはずだ。

すると、

『さわさわ さわさわ』

道を外れた草むらからさわさわと音がした。二人はびっくりしてお互いの身を寄せた。

「なに?なんかくる?」

二人は草むらをじっと息を殺して見つめた。

さわさわという音はだんだん近づいてきた、何かがやってくるようだ。

「さくら、野獣じゃないよね」

芽衣子はさくらにひそひそと語りかける。さくらは小声で。

「芽衣子、大きかったら逃げるわよ」

芽衣子は小さくうなずく。そう言われなくても逃げるつもりだった。

「良かった、荷物を軽くしていて」

芽衣子はさくらに感謝をした。

さわさわという音が二人の前で止まった。固唾を飲んで見守る二人・・・・。

がさっと音がして音の主が姿を見せた。

「・・・・・!」

 

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