座敷童子

第七話「 あんずと夕飯と 」

透は一通り荷物を片して考え込んでいた。

さっきの少女は一体誰なんだ?
座敷童子でもないとすると・・・
本物の幽霊か?
でも夕食の準備するって・・・

はっ

「とーる、あとで夕食作るから下に来てね vV 」

あんずの声が頭にワンワンと響く。
(機嫌悪そうだったしな・・・とりあえず、夕食を準備しに行くか・・・)

そう思って階段に足をかけたその瞬間。

「とーーーるーーーーーーー!!!!!!」
「!!??」
突然あんずの大きな声が耳に聞こえた。

「ど、どうしたっ」

あわてて薄暗い階段を駆け下りる。
もつれる足がもどかしく、透は体勢を立て直し、一階に続く階段を再び駆け下りる。

「あっ、あんず、ナニが・・・」
「あぅぅ、透ぅ」

一階の台所の場所が良くわからないので、あんずの顔は見えないが、声から察するに何か悲
惨なことがおきたのだろう。

「とーる!そこ右!!」
「えっ、あっ、ハイ!!」

言われたままに右に曲がると、そこには古い概観の家とは裏腹に、綺麗なキッチンが目の広
がっていた。
まるで、ホテルの厨房のように整備され、美しく磨かれたキッチンだった。
しかし。

「えっと・・・」

その一角は想像した以上に荒れていた。

「この異臭と煙は・・・ゲホっ」
「あああ、あんずは、カレーを作ろうと思ったの〜っ」
「カレー?」

ウソだ!!

「とりあえ・・・ゴホっ、換気扇〜っ、換気扇!!」
「えと、えと、うわわわ、コレかなッ」

そう言ってあんずは目の前に伸びている一本の紐をグイと引っ張った。

バシャーーーっ

「わーーーっ!冷たいっ!」
「なな、なんで水が天井から!!??」
「多分かっちゃん!」

とりあえず顔を拭いてコンロから鍋を下ろし、流しに置いて水をかけまくった。
シュワシュワと煙が出て、視界をさえぎった。
やがて、透の目の前に煙の隙間から鍋が姿を現す・・が。
見るも無惨な鍋の姿。

「・・・あ、あんず今日まで夕食作ってたのは・・・誰?」
「・・・かっちゃん」
「・・・桂じいちゃん」

ウソだ!!

桂じいちゃんって料理したっけ!!!
というか出来たっけ!!!

「あ、カレーということはご飯もあるよな?」
「ご飯はさらが・・・」

さら?

「あ、ああ、あの人か・・・」
「さらが庭のかまどで炊いてるはず」

かまど!!??

「かまどあるんだ・・・しかも外に」
「うん」
「ダメです〜」

そう言ったのは無論透ではない。

「さら!」
「ご飯、焦げ付いちゃいましたι」

そう言って持っていたかまどの中を見せる。

「おこげにしては・・・ひどいですね・・・ι」
「ごめんなさいぃ、あら?透さんは何してるんですか?」
「自分は手伝いをしようと思って・・・」
「まあ・・・でもちょっと遅かったみたいですねえ・・・」
「は、はい・・・」

かくして・・・

「おう、俺の出番久しぶりだな。」
「じいちゃん突然何を」
「うむ、うおッ!なんと!!鍋がッ」
俺の言葉を無視して桂じいちゃんはキッチンを見た。
「私のお気に入りの鍋があぁ」
そう言いながら焦げ付いたままの鍋をさする桂。

「ご、ごめんね、かっちゃん」

上目遣いで泣きそうに言うあんず。
桂はあんずの頭をぽんぽん叩き、言った。

「いや、いい。いつもは私が料理を作っていたが、今日は何であんずが作ろうとした?」
「そ、それは・・・」

言おうとしているがうまく言えない、そんな感じがした。

「それは・・」

俺のほうをチラっと見るあんず。

「透が来るから、だろう?」

やがて、桂じいの言葉に静かにうなづくあんず。

「俺のために?」
「とーるが家に来るのは久々だから・・・あんずが作って食べさせてあげようと思って・・・」

胸の奥が熱くなるようだった。

「そ、そう・・・か」
「あんずちゃん、前から練習してたんですよ」

ニコニコ笑いながら言うさら。

「あんず・・・」

悲しげなあんずの横顔。
この子は本当に子供か?

そして、俺は立ち上がった。

「わかった、あんず一緒に作ろう」
「え・・・?」
「こう見えても、料理は得意だからさ」

家事ばっかやってたからな・・・

「とーる・・・ホントに?」
「任せろって!」

あんずの表情がゆっくりと笑顔に変わる。

「うんっ」
「じゃあ私はご飯を炊くか・・・さら、手伝ってくれ」
「はい」

台所に高い影と小さい影が並んでいる。

「ねえねえ、とーるは何が好き?」
「え?何が?」
「たーべーものっ!!」

あんずは少し背伸びをしてたまねぎの皮をむき始めた。

「そうだなあ・・・納豆、好きだなぁ」
「えへへ、あんずも好き!でも一番好きなのは〜」

また背伸びして皮をゴミ箱に投げ入れる。

「ご飯!」
「あはは、ご飯かあ。」
「うん!」
「あれえ?アンタら何してんの?」
「あ、おねえちゃん!」
「あ、時子さん。ご飯を作って・・ぶっ」
「ん?」

時子はバスタオルをはおったままの姿で目の前に立っていた。

「そそそそその姿をどうにかしてくれませんか」
「あら〜。透くーん、見たいのぉ?」

そう言ってバスタオルの端をつまんでみる。

「と・き・こさんッ」
「あはは、冗談冗談♪しっかし、二人を見てると・・・なんか兄妹みたいね」

最後の言葉を少し静かに言ってから、時子は身を翻して風呂場へと戻っていった。

「とーる、タマネギむけたよ!」

あんずがタマネギを二個手に持って見せてくれた。

「うん、ありがとうあんず。じゃあ次は・・・」
「なになに?」



こうして夜は深さを増してゆくのでした・・・
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